鳥取から世界へ────ONESTRUCTIONが仕掛ける、建設業DXを超えた協調戦略とは
Startup Vision Interview #14
鳥取から世界へ────ONESTRUCTIONが仕掛ける、建設業DXを超えた協調戦略とは
日本の建設業は、GDPの約6%を占める巨大産業でありながら、デジタル化において大きく立ち遅れている。設計データは企業ごとに分断され、多重下請け構造の中で情報は滞留し、現場の負担は増すばかりだ。2024年問題に象徴される人手不足も深刻化し、業界全体が持続可能性の危機に直面している。 こうした課題に対し、鳥取発のスタートアップONESTRUCTIONが挑んでいる。「建設業のあらゆるデータをオープンにする」というビジョンのもと、openBIMという国際標準に準拠したソフトウェアで、業界のデータ連携と透明化を推進する。 2020年3月、鳥取大学在学中に創業した西岡大穂氏は、「地域経済にインパクトを出す」ことを会社の存在意義の一つに掲げる。従業員約40名のうち4分の1を鳥取に配置。Autodeskや業界団体のbuildingSMART Internationalとも連携するほか、2023年にはJ-Startup WEST、2025年には経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の生成AI開発プロジェクトに採択された。 本稿では、西岡氏が語ったビジョン、リーダーシップ、チームビルディング、成長戦略を通じて、地方発スタートアップの産業変革への挑戦を追う。建設業という巨大レガシー産業が、「協調」と「国際標準」を軸にどう変わりうるのかを、一人の起業家の言葉から読み解いてみよう。
インタビュイー
京都府京都市出身。京都府立桂高等学校植物クリエイト科卒業後、2016年に鳥取大学農学部に進学。大学在学中に建設Techベンチャー「ONESTRUCTION株式会社」を創業し、代表取締役CEOに就任。2020年に大学を卒業し「株式会社リクルート」に入社。開発ディレクターを経て、2021年からは「株式会社リクルートMUFGビジネス」にも出向し、SaaS+Fintech分野の新規事業のプロダクトデザイナーを担当。創業以来4年間、二足の草鞋で会社経営を続ける。
ミッション
興味関心
日本の建設業は、GDPの約6%を占める巨大産業でありながら、デジタル化において大きく立ち遅れている。設計データは企業ごとに分断され、多重下請け構造の中で情報は滞留し、現場の負担は増すばかりだ。2024年問題に象徴される人手不足も深刻化し、業界全体が持続可能性の危機に直面している。
こうした課題に対し、鳥取発のスタートアップONESTRUCTIONが挑んでいる。「建設業のあらゆるデータをオープンにする」というビジョンのもと、openBIMという国際標準に準拠したソフトウェアで、業界のデータ連携と透明化を推進する。
2020年3月、鳥取大学在学中に創業した西岡大穂氏は、「地域経済にインパクトを出す」ことを会社の存在意義の一つに掲げる。従業員約40名のうち4分の1を鳥取に配置。Autodeskや業界団体のbuildingSMART Internationalとも連携するほか、2023年にはJ-Startup WEST、2025年には経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の生成AI開発プロジェクトに採択された。
本稿では、西岡氏が語ったビジョン、リーダーシップ、チームビルディング、成長戦略を通じて、地方発スタートアップの産業変革への挑戦を追う。建設業という巨大レガシー産業が、「協調」と「国際標準」を軸にどう変わりうるのかを、一人の起業家の言葉から読み解いてみよう。
データで変える建設業、地域から生まれる世界標準

Photo credit: ONESTRUCTION
ONESTRUCTIONのビジョンは二つの軸で成り立つ。一つは「建設業のあらゆるデータをオープンにする」という産業変革。もう一つは「地域経済にインパクトを出す」という地方創生だ。
鳥取は長期にわたり都道府県民所得の低迷が続いている県の一つ(内閣府経済社会総合研究所「県民経済計算」によれば、鳥取県の1人当たり県民所得は長期にわたり全国下位で推移)。
西岡氏は「東京で100人の企業を作るより、鳥取で100人の企業を作る方が社会に対するインパクトが大きい」と語る。現在40名のうち10名が鳥取にいる。この地域での挑戦が、openBIMという国際標準を通じて世界につながっている。
- インタビュアー
- 鳥取本社という選択に、どのようなビジョンを込めたのですか?
- 西岡
-
会社を作った時、東京でやる選択肢もありました。でも、「何のために会社をやるか」を深く考えたんです。鳥取は所得が下がり続けている珍しい県なんですよ。どうせ会社をやるなら、事業の中で建設業を変えていくことはもちろんですが、会社自体が成長する中で地域にインパクトを出したいという思いが強くありました。
現在、従業員は約40名いますが、そのうち4分の1に相当する10名は鳥取にいます。東京に100人の企業を作るよりも、鳥取で100人の企業を作る方が、社会に対するインパクトが圧倒的に大きいんです。
- インタビュアー
- 「建設業のあらゆるデータをオープンにする」というビジョンを、どう実現していくのですか?
- 西岡
-
私たちが今目指しているのは、各社が多重下請け構造の中で苦しんでいる状況を変えることです。上流から降りてくる情報が限定的なのに、やらないといけないことは膨大にある。まずはデータ連携やデータの共通化によって、より下流の方々にデータや要件が行き渡るような社会を作っていこうというのが、現在取り組んでいるアプローチです。
それが進んでいくと、多重下請け構造がすぐに変わるわけではないですが、「下請け」構造ではなくなってくる。相互に協同し合うような社会になっていく。それがまさに、建設業として持続的なスタイルではないかと考えています。
- インタビュアー
- このビジョンを、なぜ鳥取から実現しようと考えたのですか?
- 西岡
-
地方という環境が、実は視野を広げてくれたんです。鳥取では建設業だけでなく、農業、水産業、林業といったあらゆる産業との距離が近い。その中で、いろんな産業があって初めて地域や社会が回っていると気づき、「レガシー産業をテクノロジーでアップデートしていく」という志が生まれました。
建設業を変えたいという大学の先輩・宮内(ONESTRUCTION共同創業者であり現在のCTOである宮内芳維氏)に出会い、建設業には課題が山積みなのに業界のプレイヤーしかいない状況だと知りました。それならば、建設業で起業するのはありだなと思い、気づいたら会社を作っていたという感じです。
多重下請けとデータ分断──なぜ建設業ではコストと責任が見えなくなるのか

日本の建設業は、海外と比較して特異な産業構造を持つ。それが「多重下請け構造」と「発注者の専門性の欠如」だ。海外では発注者側に専門人材がいるが、日本では発注者が建設の専門知識を持たず、ゼネコンに丸投げし、さらに下請け、孫請けへと流れる。
結果として、コストの透明性が失われ、発注者と建設会社の双方が疲弊する構図が生まれている。西岡氏が強調するのは、産業構造だけを変えても意味がないということ。新しいテクノロジーとデータ連携で透明性を確保しながら産業構造を変えていく必要があると語る。
- インタビュアー
- 建設業界の課題として、海外とのギャップをどう捉えていますか?
- 西岡
-
海外と日本の大きな違いは、産業構造にあると思います。海外の建設業では、発注者側が大きな権限を持っていて、発注者の中に一級建築士のような人や建設をマネジメントする人がいるんです。
一方、日本では発注者から仕事を受けたゼネコンが、建築士やマネージャーを抱えています。つまり、発注者自身が発注したコストの妥当性や正しさを理解していない。これはITの多重下請け構造と全く同じです。この産業構造の違いが、今一番大きなギャップだと思います。
- インタビュアー
- その構造が、具体的にどのような問題を引き起こしているのでしょうか?
- 西岡
-
たとえば、600億円かかると言われていた工事が、急に800億円かかりますと言われたとします。200億円上振れているのに、発注者はなぜなのかわからない。でも建設会社の立場からすれば、物価も上がっているし、人件費も上がっているし、国からのルールもどんどん厳しくなってコストを上げざるを得ない。
それ自体はすごくやむを得ないものだと思うんです。お互いがそうならざるを得ない構造が起きてしまっている。しかし、それをどう変えていくかという時に、デジタル技術を使うことが重要だと考えています。新しいテクノロジーやデータ連携によって、産業構造が変わっていく中で、より良い新しい建設業のあり方を考えていきたいと考えています。
- インタビュアー
- 建設業の方々は、自分たちで自分たちを変えられないのでしょうか?
- 西岡
-
建設業はかなり専門性の高い業種で、学ぶべきことややるべきことがとてつもなく多い。もう一つ、物事のスパンが非常に長い。建設業だと、一つ計画して建てるまでに2〜3年、場合によっては10年以上かかる。スピーディーに変化したり、変化しながら考えたりすることが当たり前の産業ではなかったのが、自ら変化しにくかった一番の要因だと思います。
だからこそ、私たちの存在意義は、変えていける部分と時間をかけてゆっくり積み上げていく部分を、建設業の中で仕分けすることだと思っています。建設業の人たちの実務を棚卸しして、「これは早く進められますよね」「これはじっくりやらないといけないですね」ということを、一緒に言語化したり構造化したりするということです。
「儲かればいい」では終わらない──1997年世代の起業家が共有する価値観

西岡氏のリーダーシップを語る上で欠かせないのが、同世代の起業家たちとの関係性だ。1997年生まれの彼は、タイミー代表取締役の小川嶺氏、Zip Infrastructure代表取締役CEOの須知高匡氏、ElevationSpace代表取締役CEOの小林稜平氏、Solafune代表取締役CEO上地練氏、Closer代表取締役の樋口翔太氏、プロッセル代表取締役CEO横山和輝氏らと交流を持つ。彼らに共通するのは「社会インパクト」を重視する価値観だ。
「タイミーの小川さんが出てきている時点で、同世代である私たちはもう言い訳ができない」。同世代の成功を刺激として捉え、5年後、10年後に世界規模でインパクトのある会社を作ることを当たり前に考える。
- インタビュアー
- 同世代の起業家たちに共通する特徴や価値観はありますか?
- 西岡
-
当たり前にグローバルを語ったり、当たり前に社会課題を考えたり、当たり前に日本全体をどう良い方向に持っていくかを考えてたりしている人が多いように思います。反対に「儲かればいい」ということだけを言っている人はあまりいないように思います。一昔前のスタートアップは、もしかすると大金持ちになりたい人たちがやる選択肢だったかもしれませんが、そこからは違ってきている。本当の意味で世の中を変えたい、業界を変えたい、地域を変えたい、日本を変えたい、世界を変えたいと思っている人が、本当の意味でのスタートアップの世界に入ってきているんだと思います。
- インタビュアー
- 経営において、大切にしている価値観は何ですか?
- 西岡
-
一つは、会社自体の存在意義として地域経済にインパクトを出すということです。これは創業時から変わっていません。もう一つは、来てくれた人たちに長く働いてもらえるように、会社をより良くしようと頑張っています。今40人いるのですが、3ヶ月前まで退職者がゼロで来ていました。マネージャー以上はエグゼクティブコーチングもつけています。個人も組織も成長し続ける。そんな価値観を当たり前にしていきたいです。
- インタビュアー
- リーダーとして、意思決定で重視していることは?
- 西岡
-
変化を楽しむということと、多様性を許容するということです。会社としても常に新しいことにチャレンジしています。一方で、当社のカルチャーの一ついいところは、変化を楽しむメンバーも、持続的に回すメンバーも、両方いるということ。結構多様で癖のあるメンバーも多いんですが、そういういろんなメンバーがいることをみんなが許容し合っています。
変化を楽しむ組織文化

Photo credit: ONESTRUCTION
ONESTRUCTIONの組織の特徴は多様性だ。3分の1が建設業出身者、3分の1がIT企業出身者、残り3分の1が銀行など多様なバックグラウンドを持つ。グローバル戦略チームを率いるLucas Haywood(ルーカス・ヘイウッド)氏は、オーストラリアと日本のハーフで日本マイクロソフト出身だ。
また、ONESTRUCTIONは、鳥取大学に県外から進学してきた学生が、卒業後に東京や大阪などの大都市に戻るのではなく、そのまま地元・鳥取で就職するための受け皿にもなっている。
- インタビュアー
- 共同創業者の宮内氏との出会いと役割分担について教えてください。
- 西岡
-
大学4年の夏に、大学の先輩だった宮内に会ったんです。建設業を変えたいという熱心な思いを持つ人でした。その後、興味半分で建設業を調べ始めたら、とてつもなく課題が大きく、超レガシーで変えるべき課題が多いのに、そこには建設業界のプレイヤーしかいないと気づきました。
宮内と話して盛り上がって、気づいたら創業していました。私が「レガシー産業をテクノロジーで変える」という志を持ち、宮内が「建設業を変えたい」という志を持っていて、二人の思いが共鳴して創業に至りました。
- インタビュアー
- グローバルチームのルーカスさんは、どのような経緯で迎え入れたのですか?
- 西岡
-
ルーカスは、母親が鳥取出身で、学生時代には、休暇の度に鳥取に来ていました。当初は業務委託で海外市場の調査に関わるようになり、ONESTRUCTIONの事業や建設業界への理解を深めていきました。そして2025年5月、「日本と世界の架け橋になる」という彼自身の想いとも重なり、グローバル戦略責任者として参画しました。
ルーカスと話しているのは、海外に営業拠点を置くような海外展開ではなく、当たり前に海外メンバーが在籍している会社を作ろうということです。暮らす場所や働く場所、人種で可能性が制限されるのではなく、地方においても海外においても日本の都心においても、どこであっても働けて、暮らせて、挑戦ができる会社にしたいですね。
- インタビュアー
- どのような人材を求めていますか?
- 西岡
-
当社に合う人材は、軌道修正を続けながら、その変化を楽しめる人だと思います。常に新しいことへのチャレンジや、今のやり方を一旦やめて違うやり方をやるということが、日々求められます。一方で、バックオフィス系のメンバーなど、持続的に会社の基盤を支えるメンバーも、長期にわたり貢献してくれています。
そして、建設業の経験は全く必須ではありません。IT企業、金融機関、メーカーなど、さまざまな業界出身者が活躍しています。異なる視点が交わることで、業界変革に必要な新しいアプローチが生まれています。多様性を受け入れ、お互いに学び合える環境があることが、ONESTRUCTIONの大きな特徴です。
「ONESTRUCTION=BIM」ではない──事業を支える3本柱

多くの人が「ONESTRUCTION=BIM」と思っているが、実は同社の事業構成は異なる。BIMが3分の1、残り3分の2はAI開発やゼネコン・設備メーカー向けの基幹システム開発だ。西岡氏は「建設×データ×AI」こそが自社の本質だと語る。
2025年には経済産業省とNEDOの生成AI開発プロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」第3期に採択され、建設業に特化したLLMを開発している。西岡氏が重視するのは「協調領域」と「競争領域」の分離。業界共通基盤となるAI技術を協調領域として率先して開拓することで、業界全体のデジタル化を加速させる狙いがある。
- インタビュアー
- ONESTRUCTIONの事業について、BIM以外の領域も含めて教えてください。
- 西岡
-
多くの方が「ONESTRUCTION=BIM」と思っていらっしゃいますが、実はBIMの領域の仕事は今、全体の3分の1ぐらいなんです。3分の2は、各社さんと一緒にAIの開発やAI活用に携わったり、建設会社さんの大規模な基幹システムの開発に関わったりしています。実はBIMだけではなく、「建設×データ×AI」というところが私たちの本質です。
- インタビュアー
- AIの活用について、具体的な取り組みを教えてください。
- 西岡
-
私たちは、経済産業省とNEDOの生成AI開発プロジェクト「GENIAC」に採択されています。海外で作られたAIを日本に持ってくるだけでなく、日本から建設業に特化したLLMを生み出す取り組みです。
AIの活用では、単に汎用モデルを作るだけでなく、建設業の独自知識をどうデータベース化するか、それを行政と民間でどう使えるようにしていくかという制度設計も重要です。業界では、「協調領域」というみんなで力を合わせる部分と、「競争領域」という事業として争い合う部分を分けています。業界共通基盤となるAI技術を協調領域として、私たちは先陣を切ってやりたいと考えています。
- インタビュアー
- openBIMという概念にこだわる理由は何ですか?
- 西岡
-
openBIM(オープンビム)は、新しいものをみんなが使うという考え方ではなく、みんなが好きなソフトウェアを使うところは維持しつつ、データだけは目線を揃えていくという考え方です。建設会社さんが使い慣れているソフトウェアを使いつつ、どう新しい技術に合わせていくかが大事。だからこそ、IFC(Industry Foundation Classes)という国際標準を非常に重視しているんです。
私たちは今、国内のレガシーな建設ソフトウェアメーカーさんともアライアンスを組みながら、その人たちのプロダクトのデータ形式を国際標準まで引き上げるサポートをしています。「和を持って尊しとなす」という精神で、この業界を変えていけたらいいなと思っています。
- インタビュアー
- 建設業に隣接する産業との協業について、具体的に教えてください。
- 西岡
-
建設業というものだけで見てしまうと、製造業や設備系のメーカーの方々は離れた感じになってしまいますが、実はすごく近い領域にいらっしゃるんです。たとえば、今スマートビルの関係の案件を、空調機器メーカーと一緒に仕事をしています。製造業の工場や自動化工場の技術は、建設業の技術と製造業の技術が掛け合わさっている部分だったりします。
他の産業×建設業というのは、ものすごく大きなマーケットがあるので、そこを一緒に模索するような会社さんとタッグを組んでいきたいなと思っています。
日本に根を張り、世界に枝を伸ばす

ONESTRUCTIONのグローバル戦略は、「日本に太い幹を張り、そこから枝を海外に伸ばす」というイメージだ。グローバルチームの仕事は3つ。第一に世界の建設テック情報のキャッチアップ、第二にONESTRUCTIONの存在を世界に発信すること、第三にプロダクトを世界標準で作ること。
興味深いのは、日本の建設業のソフトウェアの8割が海外製だという事実だ。西岡氏は「デジタル赤字の筆頭株が建設業」と表現する。実際の現場やハード面は日本が強いのに、ソフトウェアには弱い。この課題に、ONESTRUCTIONが風穴を開けようとしている。
- インタビュアー
- 海外展開について、どのような戦略を描いていますか?
- 西岡
-
日本がすごく大きなマーケットで、複雑な建設産業の中で、まずはしっかりと根を張るということをやりたいと思っています。その上で、日本の方々と作った日本の建設技術を踏まえたこと、それを国際標準と掛け合わせたものを、ちゃんと海外に技術的に輸出していく。日本という太い幹の中で枝を張って、海外にも広げていく展開を目指しています。
- インタビュアー
- 日本の建設業のソフトウェアは、海外製が多いのですか?
- 西岡
-
はい、建設会社が使っているソフトウェアは、シェアで言うと8割が海外製品なんです。私たちも提携しているAutodeskさんなどが、まさにその代表です。ある意味、デジタル赤字の筆頭株が建設業なんです。
国産メーカーやソフトウェアで、海外も国内も伸びている会社はあまりなくて、横ばいか右肩下がりになっている。日本は、実際の現場やハードウェアに強いんですが、ソフトウェアに弱い。そこをちゃんと私たちが風穴を開けたいなと思います。
- インタビュアー
- 逆に、海外の建設テックを日本に持ってくることも考えていますか?
- 西岡
-
はい、両方やりたいんです。優れた新しい技術が日本に届いてくるようにもしたい。だからこそ、AutodeskさんとMOUを結んでいますし、今、海外の建設テック企業の日本展開を、私たちが総代理店的に、日本展開は全部私たちでやるという形で、海外の新しいソフトウェアを持ってくるということもやろうとしています。世界と日本の距離も近づけていく。その橋渡しにもなっていくということもやりたいなと思っています。

このインタビューを通じて見えてきたのは、「産業変革」という言葉の新しい定義だ。
従来、レガシー産業の変革は「東京の大企業」か「シリコンバレー型スタートアップ」が担うものとされてきた。しかし西岡氏が示すのは、第三の道だ。地方に根を張り、国際標準を武器に、業界全体の底上げを目指す。競争ではなく協調を、破壊ではなく共創を選ぶ。
興味深いのは、この選択が理想主義ではなく、極めて戦略的だということだ。鳥取という立地は、雇用インパクトを最大化し、多様な産業との距離を近づける。openBIMという国際標準は、既存プレイヤーとの協業を可能にする。「協調領域」への投資は、業界全体のパイを広げ、結果的に自社の成長機会を増やす。
そして何より、このアプローチは持続可能だ。退職率の低さ、多様な人材の共存、大手企業との戦略的提携。これらは短期的な成長を追うスタートアップでは実現しにくい。5年後、10年後を見据えた経営だからこそ可能になる。
1997年生まれの起業家たちが共有する「社会インパクト」という価値観は、単なる綺麗事ではない。それは、持続的な企業成長と社会的意義を両立させる、新しい資本主義のあり方を模索する試みだ。
ONESTRUCTIONの挑戦は、建設業界だけでなく、他のレガシー産業にも示唆を与える。巨大で複雑な産業構造を持つ業界ほど、一社による「破壊的イノベーション」ではなく、エコシステム全体の「協調的進化」が必要になる。そのとき、地方発であること、国際標準を重視すること、異業種との連携を促進することが、変革の鍵になるかもしれない。
建設業という社会基盤を支える産業の変革は、日本の産業構造そのものの変革につながる。西岡氏の言葉を借りれば、「いろんな産業があって初めて地域や社会が回っている」。その本質を理解した上での産業変革だからこそ、ONESTRUCTIONの挑戦は注目に値すると言えるだろう。
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