複合機産業と共に、日本発の1兆円産業を創る——Predictionが切り拓く、オフィス内広告の未来

複合機産業と共に、日本発の1兆円産業を創る——Predictionが切り拓く、オフィス内広告の未来

複合機産業と共に、日本発の1兆円産業を創る——Predictionが切り拓く、オフィス内広告の未来

STORIUMが応援するスタートアップの魅力に光を当てるストーリー。今回は、Prediction代表取締役CEO大木健一朗氏、COO佐藤千里氏のインタビューをお届けします。 これまで日本は、高度経済成長期のアニマルスピリットでデジタルカメラや半導体など、数多くの産業で世界トップシェアを獲ってきた。しかし、ご存知の通りデジカメはスマートフォンに、半導体は海外メーカーの新興勢力に市場を奪われている。 共通しているのは、大きくなればなるほど、「細かな市場変化に柔軟にキャッチアップ」することが難しい構造的な課題があるからだ。 実は複合機産業も例外ではない。複合機は日本企業がグローバルシェアの8割を握る高収益な6兆円産業だった。ただ、ペーパーレス化が進み6兆円市場は年1〜2%のペースで縮小し、現行の本体を売り、コピー料金で稼ぐビジネスモデルは限界を迎えている。 Predictionは、この複合機産業の強みと転換点に着目し、シュリンクする市場に逆行し、日本から再び外貨獲得できるビジネスモデルを生み出し、産業のあり方を塗り替えようとしている。

インタビュイー

株式会社Prediction 代表取締役のプロフィール写真
大木 健一朗 株式会社Prediction 代表取締役
株式会社デンソー、ベンチャー企業、大手メーカーの新規事業マネージャーを経て株式会社Predictionを設立。 大手企業、スタートアップ両観点でのマネジメント・新規事業・事業推進経験あり。 B2Bマーケティング・法人営業・新規事業・組織づくりが強み。
株式会社Prediction 執行役員 COOのプロフィール写真
佐藤 千里 株式会社Prediction 執行役員 COO
中央大学卒業。2016年、株式会社クラウドワークスに新卒で入社。複数の事業立ち上げを経て、子会社代表を経験。全社営業組織向けのセールスポリシー開発を先導し、セールスイネーブルメントの初期構想設計・実装まで担当。Predictionへは創業初期に参画。
株式会社Prediction CFOのプロフィール写真
栗原 隆 株式会社Prediction CFO
群馬県出身。財務を軸に、事業会社・金融機関・Web3スタートアップなど多様な業界で経験を重ね、BtoB向けサイネージ広告事業にも携わる。CFOとして、事業の成長と組織の基盤強化に向け、ファイナンスを中心に幅広く取り組んでいる。

株式会社Prediction

スタートアップ
東京都 2022年5月設立
株式会社Prediction(プレディクション)は、国内初となる「オフィス内サイネージ」に特化した広告プラットフォームを展開し、オフィスワーカーにダイレクトにリーチするメディアとして事業を推進しています。 ■オフィス内サイネージの特長 視聴者セグメントが明確かつ保証可能なため、B2B・B2Cの双方における新たなマーケティングの在り方を提案できるメディアです。 ■強み オフィス内サイネージという国内初のメディア展開に加え、Cookieレスでオフラインとオンラインを統合するOMO(Online Merges with Offline)関連の特許技術を保有。 これにより、認知形成からリード獲得、セールス連携までを一貫して支援できる点が大きな強みです。 ■PRポイント ①大手企業からのスピンアウトによって設立された背景があるため、スタートアップと大企業の双方の文化や意思決定プロセスを理解し、迅速かつ円滑なアライアンスが可能です。 ②実績あるOMO技術を通じて、貴社のマーケティング・セールスの変革支援もご提案可能です。 ③2024年には日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社」に選定されました。 ■なぜ自分がこの事業に取り組むのか? 「次の世代に誇れる産業をつくること」を人生のミッションに、大手企業とスタートアップの両方でBizDevをリードしてきました。その中で出会ったのが、日本がグローバルで圧倒的なシェアを持つ“オフィス”という領域です。 私はこの巨大で未開拓な空間に、広告と金融を融合した新しい産業をつくるチャンスがあると確信し、プロジェクトをスタートしました。しかし、進めるうちに、大手企業の中では意思決定のスピードがネックとなり、事業の成長が加速できない壁に直面しました。 だからこそ、自らが意思決定を担い、「日本を代表する新産業をつくる」という決意のもと、資本的に独立してスピンアウトし、Predictionを創業しました。 ■なぜ今その挑戦なのか? 社会は「可視化」と「効率化」を強く求めています。広告業界も例外ではなく、Cookieレス時代の到来により、旧来の手法ではリーチの質も、効果測定も限界を迎えつつあります。 一方で、オフィスという空間は、DXの波を受けながらも、まだまだ未開拓の「メディア」です。 テレワークと出社のバランスが見直される中で、「オフィスの再定義」が進んでいます。このタイミングだからこそ、広告とオフィスを掛け合わせた新しい価値が社会に求められていると確信しています。

STORIUMが応援するスタートアップの魅力に光を当てるストーリー。今回は、Prediction代表取締役CEO大木健一朗氏、COO佐藤千里氏のインタビューをお届けします。

これまで日本は、高度経済成長期のアニマルスピリットでデジタルカメラや半導体など、数多くの産業で世界トップシェアを獲ってきた。しかし、ご存知の通りデジカメはスマートフォンに、半導体は海外メーカーの新興勢力に市場を奪われている。

共通しているのは、大きくなればなるほど、「細かな市場変化に柔軟にキャッチアップ」することが難しい構造的な課題があるからだ。

実は複合機産業も例外ではない。複合機は日本企業がグローバルシェアの8割を握る高収益な6兆円産業だった。ただ、ペーパーレス化が進み6兆円市場は年1〜2%のペースで縮小し、現行の本体を売り、コピー料金で稼ぐビジネスモデルは限界を迎えている。

Predictionは、この複合機産業の強みと転換点に着目し、シュリンクする市場に逆行し、日本から再び外貨獲得できるビジネスモデルを生み出し、産業のあり方を塗り替えようとしている。

複合機×広告という、成熟市場の再定義

Prediction 代表取締役CEO大木健一朗氏(中央)、COO佐藤千里氏(左)、CFO栗原隆氏(右)

視点を変えて、広告の世界では「誰が見ているか分からない」という本質的な課題があり、ビジネスパーソン向けの広告やB2B向けの広告が難しいことが当たり前だった。

例えば、大手企業に対して、全く新しいSaaSサービスを訴求する場合、いずれも確率論的なリーチに頼らざるを得ず、企業の意思決定者に確実に届いているかを証明することは困難だった。

株式会社Prediction(プレディクション)は複合機産業の転換点と広告の本質的な課題を1つのプロダクトで同時に解決する革新的ビジネスモデルをを生み出している。

同社が展開する「OfficeVision(オフィスビジョン)」は、複合機販売の際にデジタルサイネージをバンドル設置することで「オフィス内に広告メディア」を実現する画期的なソリューション。マネタイズは広告収益で行う代わりに、複合機導入に発生する諸経費を割引する仕組みにより、企業のコスト削減・サイネージを活用した従業員エンゲージメント強化と広告主の効率的なリーチを同時に実現している。

現在、三菱HCキャピタル、出向起業スピンアウトキャピタル、IDATEN Venturesなどから資金調達を実施し、首都圏の大手企業を中心に1,500台以上の設置を達成。単なるスタートアップの成功例を超えて、Predictionの大木が目指すのは「日本発の1兆円産業の創造」だ。

複合機6兆円産業の危機と産業クロス型プラットフォームの誕生

Prediction 代表取締役CEO大木健一朗氏

日本が世界をリードしてきた複合機産業において、デジタル化の波は既存のビジネスモデルを根本から揺るがしている。キヤノン、リコー、コニカミノルタといった日本企業が世界シェア8割を握る巨大産業でありながら、ペーパーレス化により年間2〜3%の収益減少が続いているのだ。そんな構造的課題に直面していた業界で、新規事業のマネジメントをしていた大木氏は、ある重要な気づきを得ることになる。

外部から複合機産業に飛び込んだ大木氏が注目したのは、複合機の顧客接点とオフィスという空間の持つ可能性だった。オフィスでゼロにすることができない複合機という設備と、企業が抱えるコスト削減ニーズ、そして広告主が求める確実なターゲティング。これらの要素を組み合わせることで、Office Visionという革新的なソリューションが誕生することになる。

インタビュアー
複合機とデジタルサイネージという異なる分野を組み合わせた斬新なアイデアですが、この発想の原点を教えてください。
大木

実は複数のキャリアが掛け合わさって、この発想に至りました。きっかけは、以前、複合機メーカーで新規事業マネージャーをしていた際、複合機産業の厳しい現実を目の当たりにしたことです。

実は、複合機は日本企業のグローバルシェアが8割を超えている日本を代表する産業です。世界のオフィスの複合機は日本企業が寡占している。そして、30年間にわたって本体販売+コピー費用の高収益なリカーリングで優れたビジネスモデルだったのですが、ペーパーレス化の影響で年間2〜3%ずつ産業全体の収益が落ちています。6兆円の産業がシュリンクしているのに、なかなか新規事業を生み出せないという状況でした。

多くの新規事業リーダーが「技術」の強みだけ着目して失敗する中で、私が着目したのは複合機グローバル2,000万台の「販売力」と「顧客接点」です。

世界のオフィスの2,000万箇所を占有している、その強みを再定義することにしました。複数の市場課題を調査する中で、もっとも相性が良いものは、アメリカで4超円市場まで拡大しているコネクテッドTV広告のトレンドでした。

簡単にいうと、YoutubeやAmazon Prime Videoのような家庭内のテレビに広告を配信してデジタルと連携させる仕組みです。これをBtoBの世界に持ち込めないかと考えたのが最初のきっかけでしたね。

インタビュアー
産業課題の解決への使命感も感じられますが、このビジネスアイデアの背景にある社会的な思いについて教えてください。
大木

一番の社会貢献は、誰もが安心してプライドを持って働ける、幸せな雇用を生み出し続けることだと思っています。そのためには、トヨタ自動車のように日本の産業をリードし雇用を守り続ける矜持を持って、高収益で大きな産業を作らなければならない。

ただ、そのような矜持を持って経営している会社は日本にどれくらいあるでしょうか。これは誰かが悪いというわけではなく、賢く最適化してしまった社会課題だと捉えています。

大手企業は投下資本に対して効率よくリターンをあげる組織ですので、変に新しいことをせず自分の在任期間にフォーカスして利益を最大化すれば評価される構造です。

市場が伸びていてグローバルに競合がいなければそれで良いのですが、もうそのような時代ではありません。短期的に効率性が悪くなりますが、市場ニーズに合わせて組織のあり方を変え、次の世代に大きく花を咲かせるように泥臭く挑戦する、そんな異端が今の社会に求められているのではないでしょうか。

そして、それぞれが、自分が良ければ良いという賢い最適化から少しずつでも脱せれば、GoogleやOpenAIのような巨大な外貨獲得産業が生み出される社会になると信じています。

私たちは、ファーストステップとして複合機という産業と連携し、産業再生を通じて、それを証明していきたいと考えています。

Photo Credit: Prediction
インタビュアー
創業は2022年でしたが、当時はまだリモートワーク推奨の企業も多い状況でした。オフィス内広告というコンセプトへの影響はいかがでしたか?
大木

創業したタイミングでは、まだアフターコロナで全然出社しないような状況でした。正直、資金調達に苦労しました。「オフィスに人が戻るわけがない」、「デジタルの時代に、リアルの広告が伸びるわけがない」といった厳しい声が多くありました。

ただ、私はオフィスで人が集まるという価値、屋外広告のようなリアルの広告の価値は普遍的であると信じて挑戦し続けました。これが2021年、22年の頃ですね。いまオフィスREITやタクシー広告市場が伸びているので、どちらが正しかったかは明確でしょう。

インタビュアー
現在のビジネスモデルについて詳しく教えてください。
大木

私たちは複合機×広告というマルチサイドプラットフォームなので、基本的なビジネスモデルには、2つのお客様がいます。1つは企業の総務部の方で、もう1つは広告を出稿する企業のマーケターの方です。これらをプラットフォームとしてうまくつないでいるのが特徴です。

複合機は本体費用として百万円以上のコスト、毎月の印刷料金として数万円のコストがかかります。近年のペーパーレス化により、企業では複合機のコスト削減が強く求められています。総務部門の方々は、数万円のコストを下げるために1〜2ヶ月かけて複数社の相見積もりを取らなければならない負担を抱えています。

サイネージ複合機なら、広告収益で複合機を割引するので、誰でも簡単にコスト削減ができます。またサイネージには設置先企業が社内向けにお知らせ動画を無料で放映できる付加価値があり、コスト削減だけではなく、従業員エンゲージメントの向上という経営課題の解決にも貢献ができるため、企業の導入が進んでいます。

他方で、広告主側から見ると、伸びている企業は、顕在市場・レッドオーシャンの取り合いであるリスティング広告一辺倒ではなく、きちんとTV CMや屋外広告でブランド認知の獲得に投資し続けています。

ただ、屋外広告がいまいち伸びていなかった理由は「誰が見るか分からない」という本質的な問題があるからです。それを打破したのがタクシー広告です。タクシーは乗車エリアや属性がわかりやすく、さらに企業の上位役職者がよく見ているので稟議が通りやすいので非常に優れた屋外広告メディアです。

オフィス内広告は、ビジネスパーソンに向けたブランド認知のラストワンフィートのメディアを目指しています。オフィスに出社中の実務層から決裁者に幅広く、同タイミングで短期間で同質性の高いコミュニティに浸透するから話題になる。さらに、どの企業に放映されるかが明確なため、屋外広告に初めて取り組む広告主にとって説明ロジックが通る点が大きな強みです。

ビジネスパーソンに特化した、ブランド認知が取れる仕組み

Photo Credit: Prediction

従来の広告は「誰が見るかわからない」という本質的な課題は、業界にとって当たり前なので確率論的なアプローチをせざるを得なかった。

ただ、Predictionのオフィスビジョンはオフィス内に設置されており、視聴属性が100%明確であるという広告価値を提案している。さらにPredictionが異端なのは、広告主が知りたいが、媒体社にとっては不利となる「放映効果」を、広告主の立場で真摯に開示していることである。

一般的な放映回数や検索回数だけではなく、放映先がどの程度興味を持っているか、興味に応じてクリエイティブやマーケ施策を改善する、Predictionはこの効果測定にこだわり、特許を取得している。

誰が見るかわかるので稟議が通る、施策後も効果がわかるので次の施策立案ができる、広告主のメリットに振り切ったサービス設計が、広告主からの継続的な支持を獲得する要因となっている。COOの佐藤氏によると、特にSaaS企業、食品・飲料系企業、ふるさと納税といった分野で高い効果を発揮しているという。前職での複数の事業立ち上げ経験が、こうした顧客ニーズの把握と適切なマッチングに活かされているのだ。

インタビュアー
事前に 「広告リーチ先が事前にわかる」という従来の広告媒体の常識を覆す価値提案はなぜ生まれたのでしょうか?
大木

それは私たちが本当に売りたいもの、逆の立場だった時に本当に欲しいものにこだわっているからです。バズったから良い評価、決裁者が目にしたから良い評価というのも大切ですが、原理原則でターゲットに対して正しくアプローチし、科学的にその効果を検証するということがマーケティングの本質的な進化につながります。

さらに私たちは米国のマーケティングの先行例を研究し効果解析についても技術開発と特許取得をしています。

繰り返しとなりますが、私たちが一番伝えたいのは、「事前にどの企業が見るか100%証明できる媒体」は今まで存在しなかったということです。

広告を配信する前に、この媒体に出稿すべきかどうか広告主は事前に判断できますし、実際に放映先企業から問い合わせや購入あれば、私たちのサイネージ経由だったことも相関関係で把握できます。さらに特許取得の効果測定技術で問い合わせに至らなかったが興味を持った企業も可視化しています。

広告主観点で良い市場を作ることへのこだわり、それがこれまでにない透明性の高い広告効果測定を実現しています。

インタビュアー
その効果測定は、従来の広告とどのような点で違うのでしょうか?
大木

私たちがお客様に対して一番こだわっているのは、お客様が有利な物差しを作ることです。媒体社が事前にどの属性がみるか不明瞭な状態で販売し、施策後に放映回数やざっくりとした検索ボリュームでブランド認知がありました、といっても広告主としては社内説明しにくく、さらに次アクションがわかりにくいですよね。

それに対して、私たちはどこの企業に対して放映するか事前に公開して、特許技術を使いながら実際にその企業の方が広告主のサイトに訪れてコンバージョンしました、ということを可視化しているんです。広告主が欲しい広告主有利な物差しをつくっている。これが信頼や継続発注につながっています。

誰が見るか事前に社内説明でき、その後に興味関心を持ってサイトに来てくれた企業も可視化できる。認知形成からコンバージョンまでは時間がかかりますが、私たちのサービスを使えばブランド認知獲得できた企業に対して即座に営業施策を連動できる。

顧客視点の物差しを作ることで、社内稟議も通り、ロジックが強いので評価もされる。さらに、認知施策でよく発生するマーケティングとセールスの分断化という組織課題の解決もできる。ビジネスパーソンとしては使わない理由がないですよね。

インタビュアー
広告主の傾向について教えてください。
佐藤

私たちは首都圏の大手企業にリーチできる特徴を活かし、新規営業ハードルの高い 例えばSaaSの企業は非常に相性が良いです。また、最近特に人気なのが飲料系メーカーです。出社回帰に伴い、ビジネスパーソンのランチ・⼩休憩などの飲食需要を取り込むニーズが増えています。仕事中のビジネスパーソンはリフレッシュや発散ニーズを潜在的に抱えていることに加え、オフィス内外にはコンビニが位置することが多いからこそ、商品認知と購買の観点で効果的なんです。

もう一つ非常に人気が高いのがふるさと納税です。100%納税者で、かつ高所得者が多いビジネスパーソンという属性は、ふるさと納税と非常に相性が良く、ポータルサイト運営社の他に自治体利用も進んでいます。

大木

オフィスビジョンは文字通りオフィス中のメディアなので、ビジネスパーソン100%リーチという唯一無二の特徴があります。

ビジネスパーソンの働く時間の10時間に放映することで、従来TV CMではリーチすることが難しかった可処分所得の高い、昼間のビジネスパーソンにブランド訴求できます。

ぜひ、TV CMを継続的に実施している広告代理店の方、広告主の方は従来のTV CMとオフィスビジョンをバンドルして、そのシナジーの強さを実感していただきたいです。

戦略的パートナーシップとグローバル戦略

Prediction 代表取締役CEO大木健一朗氏

単なる広告会社ではなく、異なる2つの産業課題を捉え、産業クロス型プラットフォームでリアルの世界でグローバル1超円の産業創出を目指すPrediction。

その壮大なビジョンの実現には、既存の複合機メーカーとの協業が不可欠だ。しかし、この協業関係の構築は決して容易ではなかった。新しいビジネスモデルに対する業界の慎重な姿勢を乗り越えるため、大木氏は独自の浸透戦略を展開した。

最初から複合機メーカーのアセットに頼ってアプローチするのではなく、自らリスクを負って実績を積み重ね、業界からの信頼を獲得していく。この戦略的アプローチが、現在の成功につながっている。

また、成功モデルを独占するのではなく、すべての複合機のプレイヤーに対して平等に解放することで、既存の「営業網」と「顧客接点」を活用して、一気にグローバル展開が狙える点がPredictionの強みだ。

インタビュアー
複合機メーカーとの関係はどのように構築していったのでしょうか?
大木

どのサービスもそうですが、ゼロの状態はリスクが高いので、資本効率を重視する大手企業では誰も判断できない。複数の大手企業の新規事業マネジメント経験からそれをよく理解していました。

そこで、私たちが複合機メーカーから機器を買い上げて、自らリスクを負ってサイネージ複合機の販売をすることから始めました。一見するとスマートでないように見えますがそれが最短距離で関係構築する方法です。

まず私たちが実績を作って、「このビジネスモデルは本当に成り立つ」ということ証明し、実際に事業を黒字化させて、メーカー側に持っていくことで名だたる大手複合機企業とアライアンスを実現したというのが今のステータスです。

私たちとしては、次ステップとして、複合機産業にこのビジネスモデルを解放して、サイネージをつければ新しい収益が入り、お客さんにとってはサイネージという付加価値と複合機を安く買えるメリットが享受できる。こういったビジネスモデルに今後シフトしていく予定です。

Googleアドセンスが、ブログにタグをつければ、ブロガーは簡単に広告収益を得ることができるというモデルのリアル版だと考えてもらうとわかりやすいかもしれません。

インタビュアー
産業全体の変革を目指す上で、業界内での中立的なポジションを保つ戦略的な意図について教えてください。
大木

私たちが複合機産業の変革を目指すために、特定のメーカーに偏らない中立的な立場を意識的に保っています。最終的には誰とも対立することなく変革を進め、業界全体で新しいビジネスモデルを実装していきたいと考えています。

よく出資を見送った方々からは、「最初から複合機メーカーと直接組めばよかったのでは?」と言われますが、大事なのは現実の世界に即した戦略を考えることです。私たちは遠回りなようでステップバイステップで産業全体を巻き込むような流れを作ってきました。これが過去3年間の取り組みです。

インタビュアー
Office Visionの基盤を活用した広告以外の新規事業展開について教えてください。
佐藤

現在、広告単体のビジネスに終わらない新しい取り組みを進めています。一般的なブランドリフト調査は、Webアンケートを通じたレポートが中心ですが、特定企業の、オフィス空間に滞在している方のみのサンプルデータを集めるのは、Webアンケートではほぼ不可能なんです。

そこで私たちは、QRコードを設置して、答えてくれた方にギフトをお渡しする仕組みを開発しました。これにより、実際のオフィス空間で働くビジネスパーソンに直接リサーチできるチャンネルを開設しました。

今後はブランドリフト調査だけではなく、実際のオフィス空間で働くビジネスパーソンに、リサーチ事業を立ち上げられるんじゃないかと考えています。例えば、「出社回帰トレンドでオフィスで働く従業員1,000名に聞いた、●●●調査」のような形で、調査リリースを出すといった活用方法も既にニーズを捉えています。

大木

この事業の面白いところは、放映先のビジネスパーソンだけにアンケートが取れることです。Webアンケート調査では、ビジネスパーソンなのか、本当に広告を見たのか証明できないという本質的な課題がありますが、私たちは回答者がビジネスパーソンである保証ができますし、確実にサイネージを見た人にアンケートが取れる。

オフィスビジョンというリアルサイネージによって、ビジネス界のデータ分析・調査機関・ブランドリフト調査でもトッププレイヤーを狙えると感じています。

Office Vision 設置例
Photo Credit: Prediction
インタビュアー
社内コミュニケーションツールとしての可能性についてはいかがでしょうか?
佐藤

これはすでに実装済みで、サイネージには広告の他に天気予報と、その設置企業だけが使えるコンテンツ枠を設けています。例えば、社内イベント告知、新入社員のウェルカムボード、あるいは社長のビジョンを語るような発信など、所謂、一般的なオフィス内サイネージ用途としても活用いただいており、設置先企業の従業員様からは「社内コンテンツとビジネスに最適化された広告が週次ベースで入れ替わるので飽きないし、見てしまう」という声をもらっています。

大木

大企業では、上司から部下へと情報が落ちていく過程で、どうしてもバケツリレーのようになって、本当に伝えたいことが薄れたり、届かなくなってしまう課題があります。

私たちのサイネージを通じて、社員全員に直接メッセージを届けることができれば、社内報の新しい形として機能します。しかも、Webやイントラネットのようにアクセスしに行く必要がなく、自動的に直接情報が届く。ここに大きな価値があると考えています。

インタビュアー
将来のグローバル展開について教えてください。
大木

私たちの最終的な目標は、日本を代表する産業を作ることです。特に日本の人口は減っていくことは間違いないので、外貨を獲得できる産業であり、幸せな雇用を生み出せる産業を創造したい。Googleが世界中から広告収益を集め優秀な人材を雇用する流れを、私たちがリアルビジネスで作りたいと考えています。

複合機産業を選んだ理由は、すでに日本企業がグローバルシェア8割を握っており、販売チャネルも流通チャネルも整っているからです。この産業を変革することで、一気に外貨獲得産業を作れると考えました。

複合気産業はこの30年で、日本からグローバルに出ていく際の言語の壁や販売チャネルの壁を、すべて乗り越えています。さらに、既存のビジネスモデルの限界を感じているメーカーが、新しいビジネスモデルを模索している状況です。私たちはこの産業の強みと転換点、泥臭くグローバルシェアトップを取ったアニマルスピリットを信じています。

日本で市場創出後は、複合機産業の既存の流通チャネルや販売店とパートナーシップを組みながら、一気にグローバルにサイネージを展開していく計画です。私たちは複合機メーカーと競合するのではなく、彼らの強みを再定義し、ともに新しい価値を創造する存在でありたいと思います。

インタビュアー
海外での類似サービスとの差別化はいかがでしょうか?
大木

海外でも類似の実証実験は行われているようですが、オフィス内というドメインで実用化・黒字化に至ったケースはないと言えます。

実はオフィスに設置するハードルは高く、「複数人の社内稟議の壁」を乗り越える必要があります。オフィス内にサイネージメディアを導入するインセンティブを設計できないということが物理的なハードルですね。

それを乗り越えた後に、効果測定という技術的な壁にぶつかります。この部分でかなり広範に特許が取れているので、模倣するよりも連携した方が合理的な判断となるように設計をしています。

繰り返しとなりますが、私たちは、GoogleAdsenseがタグをブロガーに配布し広告収益を配分してきた仕組みを、オフィスビジョンを通じてリアル世界で実現できると考えています。

オフィスビジョンのサイネージを設置すれば、オフィス関連サービスの事業者は新たな収益を得られますし、顧客はオフィス関連サービスの割引やサイネージの社内向け枠を活用した従業員エンゲージメントの強化もできる。これが最終的なゴールです。

組織づくりと未来への責任

Prediction 代表取締役CEO大木健一朗氏(中央)、COO佐藤千里氏(左)、CFO栗原隆氏(右)

急成長を続けるPredictionでは、人材戦略は極めて重要な要素だ。大木氏、佐藤氏、栗原氏が描く組織像には、それぞれの豊富な経験が反映されている。同時に、インタビューの終盤で語られたのは、単なるビジネス成功を超えた、社会に対する深い責任感だった。日本で働く人たちへの思い、複合機産業で働く人々への思い、そして次世代に残すべき産業基盤への強い使命感が、Predictionの原動力となっている。

大木氏の言葉には、日本の製造業に対する深い愛情と危機感が込められていた。一方、佐藤氏は前職での多様な業界経験を通じて感じた、日本企業の潜在力とビジネスモデル転換の重要性について語った。彼らの視点が重なり合うところに、Predictionの真の価値提案が見えてくる。

インタビュアー
今後求めている人材について教えてください。
佐藤

現在、アライアンスセールスと事業開発領域の人材を求めています。アライアンスセールスは、巨大産業を作ってきた大手企業との協業を推進するミッションを担います。オフィスビジョンのメディア価値を最大化するためには、媒体の面数を増やす必要があるため、我々スタートアップによる草の根活動だけでなく、大企業を巻き込んだダイナミックな変革が求められます。また、事業開発ポジションは広告のセールスに加えて、広告基盤を活かした新規事業の開発ができる人材を探しています。

働き方については、基本的に東京中心になりますが、リモートワークにも対応しています。私たちのビジョンに共感し、チャレンジを楽しめる方であれば、地域を問わず一緒に働きたいと考えています。

大木

複合機産業の変革という、これまで誰も手をつけていなかった領域でのイノベーションに挑戦したい方、技術で社会を変える喜びを分かち合える仲間を求めています。

私たちが求めているのは、単純にスキルが高い人材ではなく、私たちのミッションやビジョンに共感してくれる人です。私たちの組織文化で大切にしているのは「チャレンジを楽しむ」ということです。複合機産業の変革という大きな挑戦をしているからこそ、困難に直面したときでも楽しんで取り組める姿勢が重要です。

インタビュアー
Predictionが目指す最終的なビジョンを教えてください。
大木

私たちのビジョンは、日本を代表する産業をつくることです。その方法として、ファーストステップは複合機産業に新しいビジネスモデルを提供し、共に再び世界で勝てる産業に仕上げていきたい。私たちはビジネスモデルというOSを提供する会社のような存在でありたいです。

一見すると遠回りかと思いますが、私たちのビジョンは日本を代表する産業を作ることです。自らがリスクを取り、泥臭く改善しながら、革新的なビジネスモデルの蓋然性を高める。そして、リスクが低くなったタイミングで業界全体と連携し新しい価値をともに創造していく、そんなプラットフォーマーでありたいと考えています。

インタビュアー
佐藤さんから見たPredictionの可能性について教えてください。
佐藤

私たちが作ろうとしているのは、単なる広告メディアではなく、オフィスワークの体験そのものを変える新しいインフラです。ビジネスパーソンの生身の声を吸い上げる機能や社内コミュニケーション機能なども含めて、オフィスで働く人たちの日常をより豊かにする総合的なプラットフォームを目指しています。

前職での経験を通じて、様々な業界の企業と接する中で感じたのは、日本の製造業の技術力の高さと同時に、ビジネスモデルの転換の難しさでした。特に複合機産業のような、長年にわたって日本が世界をリードしてきた分野で、新しい価値創造ができれば、日本全体の産業競争力向上につながると考えています。

個人的には、事業開発・法人営業を通じて多くの企業の課題解決に携わってきましたが、Predictionでの取り組みは、単一企業の課題解決を超えて、産業全体の変革に関われる点に大きなやりがいを感じています。

インタビュアー
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大木

私たちはこのサービス・ビジネスモデルを通じて日本を代表する産業をつくることがビジョンです。日本の産業が輝き、幸せな雇用を創出することで、日本の社会の信頼性が高まるそんな良いトレンドを作りたいです。

ぜひ、この記事を読んだ方は、オフィス内サイネージ複合機を導入してください、そしてオフィスビジョンに広告放映してください。新しいものでも、価値があればしなやかに活用する、その異端な1歩が世の中を変えると信じています。

佐藤

私たちの技術とビジョンに興味を持っていただいた方、協業に関心をお持ちの方からの連絡をお待ちしています。特に、未来志向、ブランド志向、UX志向を持たれている企業様とぜひ議論させていただきたいと思っています。

技術の進歩を単なるコスト削減の手段として捉えるのではなく、お客様により良い体験を提供しながら、競合との差別化を図る戦略的な投資として考えていただける企業様との出会いを期待しています。オフィス内広告という新しい価値体験を一緒に創造していければと思います。

Predictionの挑戦は、単なるスタートアップの成功物語を超えている。それは、日本の基幹産業である複合機業界の構造的課題に正面から立ち向かい、新たなビジネスモデルによって産業全体を再生させようとする壮大な取り組みだ。マルチサイドプラットフォームの一片である広告、複合機という側面だけを見ていると、この会社の本質的な勝ちを見誤ってしまうだろう。

オフィス内広告メディアを通じて複合機産業が、再び企業と社会をつなぐコミュニケーションハブへと進化する未来。そこには、テクノロジーと人間の新しい関係性、そして日本発のイノベーションが世界を変える可能性が秘められている。

オフィスという身近な空間から始まる革命が、やがて世界を変える日は、そう遠くないかもしれない。日本の製造業の底力と、新時代のビジネスモデルが融合したとき、真の意味でのイノベーションが生まれる。Predictionの挑戦から、私たちは目が離せない。

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